障害者ユニオン推進委員会ニュース(5/25)号
障害者雇用率2%に〜15年ぶりに引き上げ
厚生労働省は、自立を求め就職先を探している昨年度の障害者の求職者数を約18万2000人であると発表した。この数字は、過去最高であり、5年前と20%増としています。また、ハローワークを通じての就職件数も約6万件となり、こちらも過去最高となっています。
この状況や障害者の就労意欲の高まり、社会的責任として採用に前向きな企業が増えていることを背景に厚生労働省は、企業に義務付けている雇用率を現在の「1.8%」から2013年4月から0.2%アップし『2%』にすることと雇用義務化企業を「従業員56人以上」を『50人以上』とすることを、労働政策審議会障害者雇用分科会に諮問し、了承されました。6月にも閣議決定をしていく運びとしています。
障害者雇用率は、障害者雇用促進法で5年毎に見直しをされることになっています。引き上げられるのは、15年ぶりのことです。企業の雇用率改定に伴い、国や自治体は2.3%・都道府県教育委員会は2.2%にそれぞれ引き上げるとしています。
一方で、厚生労働省の調査で義務付けられた雇用率を達成している企業は、2011年6月時点で45パーセントと半数以下ですが、厚労省は、企業に対して障害者を雇用した時に支払われる助成金の活用を呼び掛けて雇用の確保をしていく方針との報道がありました。
この間、少数ではありますが、企業で働いている方・就労系事業所で働いている方にお話を聞かせていただいています。その話からも、「雇用率を引き上げて欲しい」のご意見もあり、雇用率引き上げのニュースは障害者にとって喜ばしいことではあります。しかし、雇用率の数字が引きあがったからといって、それに比例するように就職率が上がり、雇用率達成企業が大幅に増えるとは考えられません。特に、中小企業は、職種が限られていることや設備を整える負担等の面での難しさもあります。景気も低迷しているのもあり、そうは簡単にいかないのではと思います。
障害者も、生活をしていくため・人として生きがいや働きがいを求めてと、関わらず同じです。しかし、障害者ということで就職活動をするのに企業の『理話をしても、いろいろな理由をつけて面接をして貰えない」とありました。
厚生労働省は、職業訓練や就労支援、企業に短期間の試行的雇用を促したり、雇用した場合の税制上の特例を設けたり、助成金を支給したりしているが、なかなか雇用率が達成することの難しさがあります。
また、就職数が伸びているおかげで、解雇数は昨年度を80人下回っていますが、1253人が解雇されています。調査から、退職理由に「人間関係」をあげられています。障害者が働くこと・働きたいと思っていることに理解はできても障害に対する理解ができにくいために、摩擦が生じていき埋められない溝になっていき、障害者の方が自ら退職をしていると考えられます。誰にという個人の責任ではなく、働く障害者を企業全体で受け止めていけるような取り組みにも力を入れていく必要があることも付け加えておきます。
今回、労働政策審議会障害者雇用分科会は、厚生労働省の諮問を受けて、その日のうちに了承しています。ここでも、どうすれば社会で・企業で受け止めていけるのかが充分に議論がされたとは思えません。
厚生労働省は、来年4月までに、企業に対して丁寧に周知をして、こんどこそ雇用率が達成できる支援策を、障害者にも聞いてすすめていって欲しいものです。
(発行責任者)全国福祉保育労働組合中央本部執行委員
障害種別協議会事務局長・日本障害者ユニオン準備室事務局長
谷本 樹保
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